過年次ミッション(持続再生景観小委員会(浅野主査) 2014.4-2017.3)

背景と目的

 

 景観研究は日本建築学会においても多数の投稿論文を集める領域であり、都市デザインの基礎ともなるものである。景観まちづくりは、2004年の景観法の制定に伴い、全国的に広く展開してきている。景観小委員会はこの動きを踏まえて、(1)景観法制定後は同法の活用に向けた『景観法と景観まちづくり』(学芸出版社、2005年)を刊行、(2)その次は景観法の枠組みから離れて身近な景観価値の発見と創造に向けた『生活景』(同、2009年)を刊行、(3)現在はポスト都市化時代をテーマに『景観再考』を編集中である。

 以上の景観小委員会の活動の延長上に展開するものとして、本小委員会の活動期間中の2014年に景観法制定10年を迎えることを背景に、裾野の広がった景観まちづくりに対して「景観法10年の検証 -縮減・成熟時代の地域再生・景観の技術と制度」をテーマにして、景観法を中心とした(同法以外の取り組みも含めて)景観まちづくりのあり方を検証し、直面する課題と課題解決のための提案を行うことを活動目的とする。この10年間に人口減少や高齢化、過疎化等の課題は、景観法制定当初以上に一層深刻化しており、大都市圏か地方圏かを問わず、地域再生施策の柱として景観まちづくりを位置づける地方公共団体は増えている。例えば地方圏では、過疎化等に伴い中心市街地に空き家が増加する中で、空き家となった歴史的建築物を再利用する仕組み(「町家バンク」等)を構築、運用する新しい試みが芽生えつつある。また東京都においても、世田谷区や台東区谷中地区の例を引くまでもなく地域資源の活用による景観まちづくりの活動が試みられている。ここで全国的な地域再生に向けた景観まちづくりの動向を取りまとめ報告、提案することは、学会の社会的使命として重要と考えられる。

 

期待される効果

 

 景観法制定の10年がいわば景観まちづくりへの取り組みの裾野を拡大した時期であったのに対して、次の10年は景観まちづくりの質的向上を目指して、縮減・成熟時代の地域再生に向けた景観の技術と制度に焦点をあて、計画技術や制度上の課題の抽出、課題解決に向けての提案を行うものである。研究成果は、景観まちづくりを推し進める地方公共団体にとって有益な情報、助言となるものと考えられる。